田沢湖駅前に駅前物産館という名前の割にはささやかな「お店」がある。店頭の目立つところにまず「いぶりがっこ」がある。大根をつるしてスモークしてから米ぬかで漬け込んだもので、このあたりどこへ行ってもこれがある。ぬか臭さがなくじめっとしていないので、気軽に食べられる。一袋購入してから、店内にある「そば五郎」というそば屋でざるそばを食べたらこれが美味い。友人が「秀よし」という地酒を冷やで頼むので、つきあうとこれまた美味い。秋田はとにかく酒がおいしい。ちなみにわが家の常備酒は秋田の「高清水」か弘前の「豊盃」である。
昼からほろ酔い加減で、田沢湖へ。水深423・4mは日本一ということで、太陽の光が水中に到達する程度によって水面も緑やら藍やらに色変わりするとのこと。この水面に金色に輝く女性像が立っている。舟越保武作の辰子像。永遠の美を観音様に願ったところ、龍に姿を変えられてしまい湖に棲むようになったという伝説がもとになっている。足元の澄んだ湖水を見ると魚がたくさん泳いでいる。ウグイのようだ。
湖畔近くに廃校になった小学校「潟分校」が当時のままにきれいに保存されている。1974年廃校ということで、およそ四十年前までの日本の小学校の姿が、時間が止まったようにそこにあった。木の小さな椅子に座り、窓の外を眺めていると遠い少年のころに帰っていくようだった。校庭を囲む大樹の葉むらのそよぎが何やら語りかけてくる。よいところだ。
田沢湖に続いて角館も初めてのところ。黒板塀の続く武家町のたたずまいは地方の支藩とは思えないくらい重厚だ。城山の下に古くからの町があり、桧木内川がゆるやかに流れている。この町で育った人たちの心のおだやかさが思われる。
そうした古い日本家屋を今も使っている安藤醸造に立ち寄った。いぶりがっこを始め、みそ漬、たまり漬など様々な漬物が小奇麗にパッケージされて売られている。秋田は酒どころでもあるが漬物どころでもある。人の家を訪ねると、お菓子ではなく、いぶりがっことお茶が出される。色白の秋田美人を眺めながらポリポリやるのもおつなものである。
藤田晴央(日本現代詩人会会員









