第26回 秋田

秋田・アカシアの花 秋田市には町中にアカシアがたくさんある。訪れた時は総状の白い花が咲き誇っていて、甘い匂いがあちこちにたちこめていた。
秋田に来ると、レオナール・フジタの絵に出合えるのが楽しみだ。ここにある平野政吉美術館は、藤田嗣冶ことレオナール・フジタの絵をたくさん所蔵・展示している。ちょうどフジタのアトリエをテーマにした企画展を開催していて、彼の趣味や暮らしがわかって興味深かった。フランス人の妻・マドレーヌと二人で写った写真から1930年代の画家の精気が伝わってくる。その女性像はどことなく冷たいのにうっとりするほど官能的だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 秋田・平野美術館 平野美術館がある千秋公園は、高くはないが山城になっていて登り下りで一汗かくことになる。その山肌に「あやめ茶屋」がある。一度だけ利用したことがあるが、眺めのよい風情のある茶屋だ。
 
 
  
  
 
 
 
 
 
 
 

秋田・東海林太郎 坂を下っていったら、男の歌声が聴こえる。ああ、この町では、まだこうして休日の公園で朗々と歌う人がいるのだと感心。一目姿を見ようと近寄って行ったら、なんとそれは、東海林太郎の記念碑から流れる歌声であった。
「椰子の実」「国境の町」……かつて直立不動の姿勢で歌われた名曲に、こうした歌が好きだった亡父のことを思いだし、しばし聴きほれる。そうか、東海林太郎は秋田の人であったか、と、こうした出合いも旅の楽しさのひとつだ。
  
 
 
 
 
 
 

秋田・あやめ茶屋 友人に案内されて、奈良時代には「日本最北」に位置していたという柵(砦と役所をかねたような所)に行ってみた。これより北は夷狄(いてき)の地であったという。藤田さんは外国人なんだよと言われる。そう言われれば、なんだか新鮮な気がして、大和朝廷が支配した領域の北端から望む北の空がなんだか自由な空に思えた。旅は、時として発想の転換を与えてくれる。
ここにもアカシアの大木が多く、白い花を咲かせていた。八世紀のころ、砦の兵士もこの匂いを嗅ぎ、都に残した恋人のことを想ったのだろう。
その夜は、MAIALINOというしゃれたレストラン・バーで夕食。自家製ハムがやたらに美味い。それもそのはず、その店は肉屋さんが経営しているのだった。

藤田晴央(日本現代詩人会会員)

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